優しい悪魔
男は山道を走っていた。山の頂に住むという仙人に会うためである。
彼は近々結婚を控えていたのだが、村に謎の伝染病が流行ってしまい、
それどころではなくなってしまった。
婚約者も彼の家族も皆病床に伏せってしまい、居ても立ってもいられなくなった男は、
何でも知っているという仙人に、知恵を借りに行ったのだ。
そして、ようやく仙人に会うことのできた彼は尋ねる。
「村のみんなが変な病で苦しんでいる。どうしたら助けられる?」
仙人は悲しそうな顔で答えます。
「わしの力じゃあどうしようもない。悪魔の力でも借りんことには無理じゃろて。」
男はなおも食い下がる。
「ならその悪魔の居場所を教えてくれ。私はどうしてもみんなを助けたい。」
仙人はしばし悩んだ後、答えました。
「うーむ・・・まあいいじゃろう。悪魔の住む村を教えよう。
じゃが、おそらくどうにかできるのは、白い尻尾の優しい悪魔たちだけじゃ・・・。
黒い尻尾の意地悪な悪魔たちには無理じゃろう。それを忘れるな。」
男は悪魔の住む村の場所を教えてもらうと、すぐにその場所へと走りました。
そして白い尻尾の悪魔を見つけると、頭を下げて頼みました。
「私の村で妙な病気が流行り、皆苦しんでいる。どうか助けてほしい。」
悪魔はにこやかにほほ笑むと、
「ええ、良いですとも。」
と一言言い、呪文を唱えました。
「もうこれで大丈夫。さぁ早くお帰りなさい。」
そして男は悪魔に涙ながらにお礼を言うと、一目散に村へと帰って行きました。
(これでみんな助かったんだ・・・)
男の足取りは、来た時以上に軽やかでした。
そんな男が帰るのを見届けると、白い尻尾の悪魔に黒い尻尾の悪魔が近づき、こう言いました。
「俺にはお前みたいな酷いことはできないよ」
白い尻尾の悪魔はニコニコしながら答えます。
「あなたは私なんかと違って優しい方ですからね、仕方ありません。」
【解説】
実は最初から村は男含め流行り病にかかっており、白い尻尾の悪魔は男だけを助けたのだ。
病が男にもかかってる根拠は、後半の「男の足取りは、来たとき以上に軽やかでした。」の一文にある。
黒い尻尾の悪魔なら、ひと思いに命を取って楽にしてやる方法を取るが、
白い尻尾の悪魔は中途半端な優しさで男を絶望のどん底に落とした。
所詮世の中のやさしさなんてこんなものだ。
鷹野(あら、こんなチラシがまわってきましたよ、入江先生!)
入江(なになに、園崎魅音さん開催の執事コンテストですと?
しかも、隣にはメイド服を着た魅音ちゃんが!
これは参加しないといけませんね!)
鷹野(最近開発した症候群中和剤を使って、悟史君も参加させましょうか!)
入江(いいのかい?神隠しってなってるはずだろ。)
鷹野(データーが欲しいんですもの。良い機会じゃないですか!)
入江(とりあえず、鷹野さんにもメイド服を着てもらわないとね!)
鷹野(は~い♡)