ハナシテ


電話に出たが、何故かあいつは息を切らしていて、俺が挨拶しても返事がない。
一言だけ「話して、話して」と言ってきたが、何を話せばよいのやら。

よくよく聞けば、電話の向こうから

「もっと聞こえるように言ってやれよ、愛しの彼氏へ」

と、友人の笑い声が聞こえてくる。
さてはあいつら、俺を差し置いて飲んでるんだな、きっと。
飲み屋の騒音で俺の声が届いていないんだ。畜生。
「話して」って、電話越しにトークさせるつもりか。


乱入してやろうかとも考えたけど、急に電話も切れちまったし
眠気には抗えないので、やめた。










【解説】
乱暴されている。電話から聞こえてきた「話して、話して」は「放して、放して」。
息を切らしていたのも、ヒントになる。普通にわかりそうなものであるが。
わざと気付かないふりして襲わせているともとれる。

 

風子(放してくださいよ、岡崎さん!)

秋夫(まあまあ、見た目子供でも二十歳だろ!ちょっと付き合えよ!)

渚(朋也君とおとうさん、何してるんですか?)

朋也(お酒を飲んでるだけだけど・・・。)